春こいし 友と眺むる 紅一輪

朝方、雪がちらついていた。そんな冬のある日、私は友に再会する為に天城の山奥から伊豆の南まで下った。友と歩く町角。ビルの間の小さなお社には紅梅が一枝。おしゃべりに夢中だった私も友も、ともに口を噤み、しっとりとした紅色に見入った。多分同じことを考えていたのではないだろうか。春よ来い。恋しや春。

静岡県)荻嶋留美さん

第一回熱海写真俳句ストーリーコンテスト入選作