2014年3月23日熱海起雲閣にて、第2回熱海写真俳句ストーリーコンテストの審査表彰式が行われました。
昨年を上回る94名、244作品の応募の中から、先に選ばれた入選作(課題句部門、自由句部門、各部門10作品)の入賞者をお招きして公開審査を行いました。
一般審査員、特別審査員による審査にて両部門からそれぞれ5作品の優秀賞が選ばれ、さらに各部門の優秀賞から熱海市長賞2点、入選作全20作品の中から森村誠一賞1点が選ばれました。
コンテストにはたくさんのご応募いただきありがとうございました。
熱海市長賞:課題句部門
どんより曇った真冬の石川県から、青空と暖かさを求めて、富士山フリー切符を使って熱海に来ました。桜と富士山で写真俳句を作る予定でした。2月8日から三日間の旅でした。猛吹雪でした。暖かさも青空もありません。富士山は全く見えません。ただ、おかげで人出が割と少なくて、じっくり夜桜撮影することができました。
今回の一枚はその時のものです。ドラゴン橋近くの桜です。石像と桜の関係をいかに撮るかを工夫しました。花の匂いを嗅がすか。口に咥えさせるか。鼻面に当ててくしゃみをさせるか。結局、桜をドラゴンの咆哮に見立てて「一吠え」させました。自分としては気に入っている表現です。ちなみに、当初上の句は「石虎の」でした。
投句前に念のためインターネットで調べたところ初めてその橋が「ドラゴン橋」であることを知りおわてて今の句に直しました。そんな一句が入選ということで「人間万事塞翁がドラゴン」だな~と思います。今回は「青春18キップ」でお邪魔する予定です。果たして青空を見ることは出来るでしょうか?
牧田竜太郎さん(石川県)
熱海市長賞:自由句部門
今を盛りと咲き誇る起雲閣の桜。まだ当分の間は楽しめそうだ。だが庭園から室内を見遣るとそこには花が舞っているではないか! どうした事だろう? それは、味のあるガラス窓の仕業であった。カラクリに気づいてしまった後は、本当の桜吹雪を待つ外はなかった。
安藤一政さん(埼玉県)
森村誠一賞
2014年の「立春」は思いのほかの雪降りから始まった。栃木県日光地域も例外ではないが、関東甲信各地の雪害は、「春の雪」というあえかな季語の様相を一蹴してしまった。春に桜にさきがけて咲く梅は、「花の兄(え)」という季語にもなっている。いまだ厳しい寒気の中にも、春の兆しとして白梅の蕾を見るとき、またこの一年をがんばらなければ、との思いをあらたにするのだ。
私の長男は17歳で他界してしまった。生後1ヶ月頃のことだったか、はじめて声をたてて笑ったときの光景が、春の歓びや白梅の香りとともに、強く喚起されてくる。私は何か新しい奇跡を見たような歓びで、何度もあやしては、その明るい声と笑顔を聞きたがり、見たがった。白梅のふくらみと典雅な匂いに包まれるとき、今もありありと立ちあがる宝物のような、脳内にその再生映像が消えることはないだろう。
森萄子さん(栃木県)
自由句部門優秀賞受賞作品
梅ふふむ吾子声たてて笑ふ日に | 老木の梅咲きたるも主なし |
森萄子さん(栃木県) | 渡邉安雄さん(千葉県) |
団塊のわが身重ねし花筏 | ギヤマンの歪みて桜吹雪かな |
水江健治さん(埼玉県) | 安藤一政さん(埼玉県) |
夕桜父母ゐる家の待つやうな | |
雪井苑生さん(埼玉県) |
自由句部門入選作品
花冷えの思い出残る学舎かな | 初桜一等席の雀かな |
嶋川龍雄さん(青森県) | 遊橋惠美さん(東京都) |
有り難し義母を励ます大桜 | 老梅やタウト魂ここに在り |
藤田 聡さん(千葉県) | 矢崎英夫さん(静岡県) |
残雪のスコップ止める無常花 | |
山中大輔さん(千葉県) |
課題句部門優秀賞作品
ドラゴンの一吠え熱海に春を呼ぶ | 水の精紅白梅に降りかかる |
牧田竜太郎さん(石川県) | 小松良太郎さん(静岡県) |
糸川や花の散り込む魚干され | 紅梅に開運の香をたまはりぬ |
成川和子さん(静岡県) | 高野尚志さん(神奈川県) |
写メールを君住むパリへ初桜 | |
尾関理恵さん(東京都) |
課題句部門入選作品
落ちたとて 楽しみもあり 桜かな | 湯の街に梅の香にほひドレミファソ |
橋本光代さん(静岡県) | 鈴木成一さん(神奈川県) |
手をつなぎ熱海梅園姉いもと | 薄紅は恥じらいの色梅の園 |
加藤登志江さん(東京都) | 小宮 里さん(静岡県) |
早梅や青き芯ある山の風 | |
松原千代子さん(静岡県) |
(順不同)