於:2013年3月19日熱海起雲閣2階ギャラリー
2013年1月26日から2月27日まで“梅まつり”“桜まつり”の開催に合わせて実施しました「第1回熱海写真俳句ストーリーコンテスト」の審査表彰式が行われました。
自由句部門、課題句部門の両部門の応募者数延べ78人、応募作品180点の中から優秀賞8作品、熱海市長賞2作品、森村誠一賞1作品が公開審査の上、選ばれました。
森村誠一賞
中学校に通学するため毎日乗ったローカル線の無人駅。過疎化に歯止めがかからない山あいの町を昔と変わらず、旧型電車が軋み音をたてながら往復している。乗客はほとんどが中高生である。
駅のホームに立つと昔の記憶が蘇る。中学生になり定期券を持つと、大人に近づいたような気がして嬉しかった。乗り遅れそうになり走っていくと待っていてくれた。電車の中で友達と騒ぎすぎて、同じ車両に乗り合わせていた先生に叱られたこともあった。部活が終わる頃にはすっかり夜の帳が下り、薄暗い電灯が点いたホームを降りると自宅への道は真っ暗だった。
闇の中を前へ進むのは恐怖心が伴い、ただひたすら自分の足元を見て歩いた。記憶の中には花びらの一片もないが、あの頃も駅の桜は咲いていたのだろう。人生の折り返し点を過ぎたこれから先、欲張らず自分の足元をしっかりと見ながら歩いて行ければと改めて思う。
受賞者:群馬県高崎市)志水 芯さん
熱海市長賞(自由句部門)
夫の一時退院の日、タクシーを遠回りして桜並木を通ってもらった。夫が来るのを待っていたかのように、風もないのに一斉に桜吹雪となった。「間に合ったね!」と夫の喜んだ顔が忘れられない。
受賞者:東京都中野区)桐山陶子さん
熱海市長賞(課題句部門)
熱海お宮の松。下駄で女を蹴飛ばす像。訳を知らない人はどんな思いで見るだろうと話しながら梅園に向った。久々の梅園である。何年か前に来て、がっかりしたのだ。
微かな梅の香は売店の干物を焼く匂いですっかり消され、土産物を売る大声は観梅と程遠かった。それ以来、熱海梅園は遠慮した。しかし、誘われて来た梅園は穏やかで、まさに梅園。清少納言の「濃きも薄きも紅梅」を思いながら澤田記念美術館まで登る。
熱海は風光明媚な土地であったに違いない。それが温泉宿の立並ぶ、統一の無い建物と看板ばかりの歓楽街となり、緑は潰され、雑々とした景色となった。改善された快い梅園から熱海まで糸川沿いに下る。小振りな可愛いあたみ桜は正に満開。花の蜜を吸う目白が飛び通い花びらを川に散らす。
熱海の町おこしは、この様に美しい風景を大切に生かすことで成功するに違いない。また近々、海と山の素敵な土地を取り戻していく熱海を散策しようと思った。
受賞者:神奈川県茅ヶ崎市)田中一二三さん
総評 森村誠一
公開審査会ということで、会場の皆さんが紅白判定をして優秀賞10作品が決りました。ただこれは余興というか、ちょっとした楽しみであって、本来の作品の質に影響を及ぼすものではまったくありません。
作品というのはさまざまな光を発するもので、たまたまそれを見るタイミング、見る側の状況や、見る角度によって、いく通りにも輝きは変化します。その陰影、輝きの違いにより、たまたま今日は、このような結果が出ました。しかし本来、作品の評価は流動的、多面的であるべきもので、固定的なものではないということを申し上げておきたいと思います。
今回拝見した応募作品は、いずれもきわめて作品としての完成度が高く、魂に直接訴えかけてくる力のあるものばかりでした。写真と俳句、それぞれを分離してみても、それぞれに生命力がみなぎっています。
初めての募集にも関わらず、このような力作をお寄せいただいたことに対し、熱海市ということではなく、表現者の一人として、心から感謝を申し上げたいと思います。(要約)
優秀賞
静岡県熱海市 矢崎英夫さん | 埼玉県久喜市 萩原陽里さん |
静岡県熱海市 小松良太郎さん | 静岡県伊豆の国市 水口武彦さん |
埼玉県熊谷市 安藤一政さん | 神奈川県藤沢市 高野尚志さん |
大阪府枚方市 諏訪原和幸さん |
入選
静岡県熱海市 古田 凛さん 東京都板橋区 品川寿美子さん 千葉県流山市 石井博さん 神奈川県横浜市 山崎桃江さん 神奈川県横浜市 草場脩兵さん 静岡県賀茂郡 荻嶋留美さん 東京都江東区 遊橋恵美さん 埼玉県ふじみ野市 横田嘉男さん 東京都練馬区 上田みのさん 静岡県伊東市 遠山敬二さん
審査表彰式風景
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特別審査員の方々 | 斎藤栄熱海市長 |
一般参加者も紅白の旗を上げて審査に参加 | 課題句部門市長賞 田中一二三さん |
自由句部門市長賞 桐山陶子さん | 森村誠一賞 志水芯さん |
特別審査員と各賞受賞者、入選者の方々 |