みなさんこんにちは。斎藤牧子です。

 雨そぼ降る起雲閣で行われている写真俳句ストーリーコンテスト、いよいよ終盤へとさしかかってきました。みなぎる熱気は最高潮。人って集中力を発揮すると文字通り体まで熱くなるんですね!

 自由句部門最後の対決は、静岡県袋井市の小宅葉子さんと東京都江東区の遊橋恵美さんです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA小宅さん「『桜咲く熱海は坂の街なりし』 熱海梅園から海の方向に歩きました。しばらく行くと、先の方に海が見えてきて、熱海では毎日海を見て暮らしているのだなぁと感じました。私は産まれた時か ら毎日富士山を眺めておりました。それと同じように熱海の方は海を見ているのかしら、私にとっての富士山のように、熱海の方々は海を目に焼き付けて、心の 糧にしているのではないかしらと思ったのです」

遊橋さん「『途切れては繋ぐお囃子梅真白』 文京区は熱海のように坂と階段が多くて、坂巡り ができるくらいなんです。この牛島神社も、階段を50段以上登ったところに境内がありまして、真っ白な梅がさいていました。ふと耳をすますと三味線の音が 聞こえてきたのですが、ずっと続くのではなくて、しばらくすると弦が途切れる。聞いているうちに、中にいらっしゃるお師匠さんとお弟子さんのことを想像し ました」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA さてさて、最後の判定です。どっちにしようかなぁ。熱海の海というコンセプトもいいし、お囃子と梅もすてきな趣きがあるし。先生もじっくり考えられている模様。後ろ姿を隠し撮りしてみました。

山口さん「では、判定をお願いします。……今回は本当に白が優勢でしたね。白の遊橋さんの勝ちということになります」

森村先生「遊橋さんの作品は、非情に含蓄の深い句だと思いました。特に、途切れては繋ぐお囃子というのは、小説が次から次にいろんなチャプターに繋がれてい くような、お囃子の節ごとに様々な人生の音が聞こえてくるような気がしました。その後に「梅真白」と結んでいる。梅が真白というのは、これからどういう色 にでも染まるという暗示が含まれているのではないかと考えたのです。ですから、ここから本句取りをするとしたら、ただ一部分を変えるだけの『途切れては繋 ぐお囃子梅の色』。変えるところがほとんどないほどに、元の句が言い尽くしているんですね。素晴らしい句だと思いました。それから小宅さんの句は、心理が 坂という言葉に込められている。熱海の坂にはいろんな人生があり、そしてその先には水平線がある。その彼方には何があるだろう。坂の街である熱海の水平線 は、道への憧憬を示しているわけです。本句取りは、『花咲くや熱海の坂を順々に』。……でも、あまりよくないですね。ただ、今はまだこれ以上出てこない。 ですので、とりあえずの応急手当ですが」

 さて、課題句・自由句10作品の優秀賞が選ばれたところで、いったん休憩。その後は表彰式と、それから今までの結果など取り払って、全部の句を対象に、市長賞2部門それぞれ1句と森村誠一賞1句が決定します。

  ああ、喉がからから。ほんとにほんとに水分補給しなきゃ。近くの自動販売機で冷たいドリンクを購入。一気に飲んじゃった(小さいタイプのペットボトルです が)。戻ってみれば、参加者のみなさんは何だか仲良くなっていて、おしゃべりに花が咲いています。私は森村先生のお側に行って、こちらもちょっと雑談。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA さてその間もスタッフのみなさんは賞状や記念品を用意されています。ステージのスクリーンは下ろされ、マイクを置いて授賞式の準備。森村先生は、入選者の方全員にコメントを渡したいと、ペンを走らせていらっしゃいます。

 それからしばらくして、会の再開です。まずは課題句部門の中から熱海市長賞の発表です。読上げるのは総合司会の小松さん。こういうのって、発表する方も緊張するんですよね!

小松さん「課題句部門熱海市長賞は、林田諄さんです! おめでとうございます」

 わぁ、おめでとうございます。みなさんも大拍手。林田さんの句は『梅が香に熱海芸妓の白うなじ』でした。でも、写真俳句のコンテストですので、是非写真と合わせてごらんくださいね。

 そして自由句部門の市長賞。ちなみにこの2つの句は、事前に市長が選ばれていらっしゃったということです。

小松さん「自由句部門は岡本海月さんです! おめでとうございます。」

 岡本さんの俳句は、『花散らし風は小貝の散る浜へ』。こちらもやはり、写真と一緒にご覧くださいね。審査表彰式のページに載っています。こちらをクリック→★

OLYMPUS DIGITAL CAMERA  お二人にはステージ中央に出ていらっしゃって、観光経済部長の出野さんから表彰状と記念品目録を受け取ります。まずは林田さんから。そして岡本さん。当日 お越しくださった新聞などのマスコミ関係の方、もちろん会場のみなさんもえりちゃんもカメラを構えてパシャパシャ。それにも増して大きな拍手の音が会場を 包み込みます。

小松さん「続いて優秀賞のみなさまの表彰にうつります」

 優秀賞に選ばれた方々には、観光協会会長の中島さんから賞状と記念品目録が贈呈されます。課題句部門の優秀賞を得られたみなさんはともにステージに上がり、お一人ずつに中島さんが手渡しなさるのです。どなたのお顔も晴れがましそう。

 続いて自由句部門の優秀賞に選ばれた方々が壇上に呼ばれます。みなさん拍手。本当におめでとうございます。

 さて、最後は栄えある森村誠一賞。森村先生、壇上に向かいます。どの句を選ばれたのかしら。どなたの発表も真剣に聞いていらしたからなぁ。あれかな、これかな、と思いつつ、私も少しばかりどきどきしてきました。

小松さん「森村誠一賞は、……杉山公宏さんです! おめでとうございます」

 おお、『老いらくの恋や夕べの花枝垂れ』の方ですね! 一層大きな拍手が会場中に鳴り響きます。杉山さんが、喜ばしさと神妙さの入り交じったお顔で壇上に向かわれました。

森村先生「老いらくの恋は遠い昔のようだとあなたはいった。老いらくの恋は近い昨日のようだとあなたはいうかもしれない。杉山さんは、ただいい俳句だという だけでなく、人間、人生、青春というものを折り込んで、そこに生き甲斐を示してくださいました。審査の結果、あなたの作品を第3回写真俳句ストーリーコン テスト森村誠一賞に選びました。これからも素晴らしい句を作り続けられますよう、心からお祈り申し上げます。おめでとうございます」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA そして賞状贈呈。おめでとうございます! 杉山さんもそうですが、森村先生も嬉しそうでいらっしゃいます。杉山さんの作品、私にとっては、年を取ることをすてきに感じさせてくれるストーリーであり俳句でした。

 そして、ここで森村先生から今回のコンテストの総評を頂きます。

森村先生「俳句というのは、簡単なようでいて、奥行きと面積と体積の広い文芸であります。圧縮されたなかに世界を閉じ込め、制限されたなかに幅広いものを煮 詰める文芸は俳句しかありません。小説というのは拡大にあります。俳句というのは縮小にあります。縮小をすればする程濃厚になり、どこをとっても素晴らし い俳句ができあがるのです。みなさまのなかからこれからも素晴らしい俳句が続々とうまれることを願ってやみません。今日はどうもありがとうございました」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA  実はこの総評、その場でのお願いだったんですよ。原稿を用意していらっしゃったというわけではないんです。ぱっとこれだけのことをおっしゃれるなんて、す ごすぎる。ああ、拡大と縮小かぁ。俳句が縮小の文芸なのであれば、ひとつの句に何をどのように込められるか、それはその人の持っている生き方や心の深さと も関係するのかなぁ、と先生のお話をお聞きしながら考えました。

 そして最後に観光協会長の中島さんからご挨拶を頂きました。

 


 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA中島さん「短い時間でしたが、本日は、遠方よりお越しのみなさま、そして入選・受賞されたみなさま、本当にどうもありがとうございました。私は俳句について はよく知らないものですから、今日は本当に勉強になりました。みなさまの感性が非情に研ぎ澄まされていらっしゃるので、毎日俳句を頭を浮かべながら、カメ ラを手にされながら生活されているのかなぁ、と感動いたしました。そして、私も少しでも勉強したいなぁ、そうすれば豊かな人生が送れるだろうなぁ、と感じ た次第です。当コンテストは来年、再来年と続けていきたいと思いますが、その折にも是非熱海の地へお越しくだされば幸いです。今日は本当にどうもありがと うございました」

 

 

 

 みなさん拍手。そしてここで小松さんが会の終了を告げられます。入賞者の皆様は、これから記念撮影。壇上にイスがいくつも並べられます。

 席決めに少しばかり時間を要して、みなさん並んだところで記念撮影。

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  皆さま本当にお疲れさまでした。森村誠一賞を取られた杉山さんは、新聞社の取材も受けられていましたよ。心からお喜び申し上げます! そして、今回いらし てくださった入選者・優秀賞の方々、コンテストに応募してくださったすべての方に、深く御礼申し上げます。素晴らしい俳句と写真を拝見させていただきまし て、とても豊かな時間を過ごすことができました。本当にありがとうございました!

 最後に(何故これが最後、なーんて聞かないでくださいね(笑))えりちゃんと私の写真をとってもらいました。へへ。壇上で写真撮影なんて、胸躍る体験です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 今回も、みなさま方のご発言は、省略及び端折りまくっておりますので、その点ご了承ください。読んでくださってありがとうございました。

 といっている間に、もう4月。次の熱海はどんな顔を見せてくれるのかしら。今後も、えりちゃんと私で、熱海のすてきな風景を写真俳句とともにお伝えしていく予定です。どうぞよろしくお願いいたします!

 


 

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