森村誠一の写真俳句の愉しみ

  • 建ち腐る都心のビルや油照り 【夏】

    建ち腐る都心のビルや油照り 二〇〇五年夏、混成合唱組曲「悪魔の飽食」合唱団の中国公演に同行した。北京市を訪れたとき、市中に建ち腐れているビルを見かけた。 北京の夏は暑い。油照りの中、建ち腐れているビルは一層暑…
  • せせらぎに過去遡る夏の旅 【夏】

    せせらぎに過去遡る夏の旅 夏は水辺が恋しくなる。水平線に林立する雲の峰を追うようなマリンスポーツは豪快であるが、スケールが大きく、相応の体力と費用が前提となる。小さな旅で行きつける山間の渓流やせせらぎは、読み…
  • ただ一人都会にありて夏寒し 【夏】

    ただ一人都会にありて夏寒し 都会の夏は暑い。都会に蝟集(いしゅう)した大小すべての建物に備えつけられたクーラーから排出される熱は、照りつける真夏日と相乗作用して巨大な熱量を生む。冬は路上生活者が凍死するが、夏…
  • カブト追う幼な子の夢夏逝きぬ 【夏】

    カブト追う幼な子の夢夏逝きぬ 母の実家は養蚕農家であった。広い構えの家の二階は養蚕室になっていた。森や川の遊びに飽きると、私は一人、養蚕室に上り、大量の蚕が桑の葉を食べている音を聞くのが好きであった。 給桑時…
  • 街角のドアを開けば秋の音 【秋】

     最近、冷暖房の普及のせいによるばかりではなく、季節感が薄れている。生活様式が便利になるにつれて、季節に伴う行事は便利性の背後に押しやられてしまう。 たとえば少し前までならば、夜を徹して行なわれた祭りも、交通事情による規…
  • 鳶舞う少子化団地に人気なし 【秋】

    鳶舞う少子化団地に人気なし 日本人女性一人が産む子供の数の平均は一・二九人、子供の出生数は統計を取り始めてから最少を更新したという。人口減少の一途をたどる傾向に、政府もようやく危機感を抱き始めたようである。 戦時中は産め…
  • 木守りを盗みて染まる天の色

    木守りを盗みて染まる天の色 枝もたわわに実った柿の実がおおかた収穫され、あるいは地に落ち、鳥に食われても、最後まで残っている実がある。これを木を守るという意味で、木守りと呼ぶ。だが、食べ物のない時期には、この木守りまでが…
  • 人生を集めて燃ゆる街の炬火

    人生を集めて燃ゆる街の炬火 大都会の夜景はどんなに審美眼のない人にも美しく映える。都会の負の要素のような悪徳や、犯罪や、腐食や、諸公害など、すべての悪の根を多彩なイルミネーションに隠して、宝石を満載した巨大な…
  • 初雪や二人の部屋に気配絶ゆ

    初雪や二人の部屋に気配絶ゆ しんしんと雪が降り積もる街に、新婚のアパートの窓に暖かそうな灯りが灯っている。雪は世間の騒音を消すが、特にその部屋の気配は無人のようにしんと静まり返っている。 雪と新婚、いかにも相性がよさそう…
  • 猫通う路地に不在の友訪ね

    猫通う路地に不在の友訪ね 所用があっての出先で、友人が近くに住んでいるのをおもいだし、突然訪問することがある。だが、約束(アポ)をしていたわけではないので、友人は不在であった。そんなとき、所用のついでに突然訪…

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