森村誠一の写真俳句の愉しみ

  • 写真俳句の愉しみ 秋

    【秋】 夏は劇的であるだけに衰えるのが早い。残暑が長く尾を引いても、すでに衰亡の坂を転がり落ちている。脂ぎった真夏の太陽は次第に透明な蜜のように煮つまり、空は日増しに高くなっていく。貪婪(どんらん)に、寛大にすべてを許容…
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  • またの日もありと思へと鱗雲 【秋】

    またの日もありと思へと鱗雲 秋の夕暮れには、その日し残したことへの未練が煮つめられているように見えるが、秋の雲には、なにか失敗をしても再起の機会を暗示するようなサインがあるような気がする。春の雲の曖昧さや、夏…
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  • 名月を掛け忘れたる屋根の竿 【秋】

    名月を掛け忘れたる屋根の竿 月を追いながら夜の街を歩く。秋の夜の愉しみの一つである。だが、なかなかおもうような月に出会えない。叢雲(むらくも)がかかったり、高層ビルに邪魔をされたり、イルミネーションが月光を消…
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  • 斜陽まで吊り戻したり鉄の爪 【秋】

    斜陽まで吊り戻したり鉄の爪 大型の建設機械が姿を見せると、あっという間に風景が変形してしまう。昆虫や小動物の天下であり、野鳥の食堂であった森や雑木林が丸坊主にされ、丘陵が削られる。そして、その後に公団住宅や、…
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  • 立ち枯れし家の秘密や水の音 【秋】

    立ち枯れし家の秘密や水の音  散歩コースに廃屋がある。小さな渓流の崖っぷちに建っている。崖に面して危なげに建つ古い二階家は、いまにも倒壊しそうであるが、近づいてみると意外にしっかりした構えである。立地点そのものが崖の中腹…
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  • 余生まで銀杏(ぎんなん)拾う老女あり 【秋】

    余生まで銀杏(ぎんなん)拾う老女あり 逆L字型に曲がった腰を時どき伸ばしながら歩いている老女を見かける。生涯働き通して、腰が曲がった後までも、だれの力も借りずに歩きつづけている。体質もあるとおもうが、大地にしがみつくよう…
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  • 写真俳句の愉しみ 冬

    【冬】 なだれ崩れるような夏の終焉とちがって、秋は静かに滅びていく。木々の葉が落ち尽くし、地上に落葉カーペットを敷きつめると、すでに師走に入っている。梢に木枯しが鳴り、夜更け、騒音が絶えると虎落笛(もがりぶえ)を聞く。北…
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  • 飛行士の一筆書きや年つまる 【冬】

    飛行士の一筆書きや年つまる  冬の磨き抜かれた硬質ガラスのような青空に、よく飛行機雲が現われる。青すぎて暗く見える空の真芯に、一筋長くつづく飛行機雲は美しい。英語ではこれをベイパー・トレイル(水蒸気の跡)と言…
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  • 暮れてなお枯木も咲けり光花 【冬】

    暮れてなお枯木も咲けり光花 年末が近づくと、街路樹やビルの壁に小電球を鏤めたイルミネーションが輝く。昼間は見すぼらしい枯木が、夜になるときらめく光の花を満開にしてよみがえる。 その光景はいったんリタイアして第一線から退い…
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  • 撞(つ)くほどに煩悩増すや除夜の鐘 【冬】

    撞(つ)くほどに煩悩増すや除夜の鐘「紅白」が終わり、町や集落の諸寺から除夜の鐘が鳴り始める。その鐘の音に耳を傾けながら、ああ、今年も逝くのだなと感慨を新たにする。 人間の百八の煩悩を取り除くために、百八回撞く…
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