写真俳句の制作過程1

句材としての写真には芸術性はいらない

 制作といっても、デジタルカメラとテープレコーダーを持って外に出るだけである。家の中でも俳句を詠(よ)めないことはないが、外界の方が刺激に満ちていて、眠っていた頭が醒(さ)めてくる。頭は足から衰えるというが、まさに足が頭を活性化してくれる。

6390 カメラはなるべく小型で、軽量の機種が望ましい。付属品は一切持たない。つまり、身軽であることが必須の要件である。時には自転車に乗って行動範囲を広げる。カメラとテープレコーダーを持ってうろうろしていると怪しまれることがあるが、自転車にまたがっていると、あまり警戒されない。自転車には不思議に人間のにおいや、怪しさを中和するような作用があるらしい。

 カメラマンの写材と俳句の句材は異なる。写真家は芸術的な構図を求めるが、句材としての写真には芸術性はいらない。芸術性はあっても悪くはないが、芸術性を中心にすると、俳句と一体になりにくい。写真俳句は、写主俳従でもなければ、俳主写従でもない。俳写一体となって独自の表現世界を創造(クリエイト)する。

 二兎を追う者は一兎をも得ずという諺があるが、もともと二兎を追っているのではない。予感が走る光景や場面を写真におさめる。撮影した写真を見つめている間に句想が湧き、固まってくる場合もあれば、俳句が生まれてから写真を撮ることもある。

 最近は写真が先に立つようになったが、一瞬、目撃した光景はディテールを認識せず、認識と同時に忘却が始まるので、句界として観察が浅く、不足しやすい。

3931 写真は読んで字のごとく、被写体の情報を忠実に写し取ってくれる。芸術写真には感性が求められるが、俳句写真には情報が欲しい。特に俳句には一瞥(いちべつ)しただけでは隠れている情報が、写真には写し取られる。写真の情報から俳句を創造(クリエイト)することによって、感性の出番となる。一見平凡な写真を俳句と結びつけることによって、非凡な表現世界を創造することが可能となる。

 このようにして、毎日の散歩コースや、旅に出て撮影してきた写真をパソコンに取り込み、拡大して眺めている間に俳句が生まれてくる。帰宅する前に喫茶店に入って、デジカメのモニター画面に撮りたての画像を覗(のぞ)いている間に、俳句が生まれることも少なくない。

 

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森村誠一「写真俳句の愉しみ 四季の彩り」(スパイス刊)より

第4回コンテスト結果発表

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